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2026年8月度QPI(確報)
所定内給与は高い伸びを維持するも、可処分所得は鈍化
株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2026年8月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。
8月の算出結果では、所定内給与QPIが前年同月比+3.50%となり、前月(+3.41%)から0.09ポイント上昇し、春闘における高水準の賃上げ回答が基本給にしっかりと定着している状況が確認されました。一方で、可処分所得QPIは前年同月比+2.25%となり、前月(+3.47%)から伸びが鈍化しています。この背景には、前年の反動に加え、働き方改革等に伴う所定外給与(時間外手当等の諸手当)の減少が影響していると考えられます。それでも、足元の消費者物価上昇率(7月時点・総合+1.9%)に対しておおむね均衡する水準を保っています。
税および社会保険料の動向については、所得税QPIが前年同月比-0.50%(前月+4.39%)と大幅なマイナスに転じました。これは令和8年度の「基礎控除の見直し」による構造的な負担軽減や、特定の法人における一時的な動向が影響しています。また、地方税QPIは+2.97%(前月+3.76%)とやや低下しましたが、社会保険料QPIは+3.66%(前月+3.46%)と引き続き高止まりしています。共通して、改定時以外の月は基本的に固定化される(社会保険料の雇用保険料を除く)性質である一方で、地方税は遅れて行われた確定申告により税額修正されることがあります。他方で、社会保険料は2026年5月から控除が開始された「子ども・子育て支援金」の影響等も重なり底堅く推移しています。基本給の上昇トレンドは維持されていますが、労働環境や制度変更が手取り額に複雑な影響を及ぼす結果となりました。
| 2026年8月度 | 2026年7月度 | |
|---|---|---|
| 所定内給与QPI | +3.50% | +3.41% |
| 可処分所得QPI | +2.25% | +3.47% |
| 地方税QPI | +2.97% | +3.76% |
| 所得税QPI | -0.50% | +4.39% |
| 社会保険料QPI | +3.66% | +3.46% |
※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。
※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。
※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。
2026年9月度データの速報値の公開は2026年10月9日(金)、確報値の公開は2026年10月15日(木)を予定しています。
株式会社ペイロールについて
1989年4月1日設立。創業以来、主にエンタープライズ企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、279社123万人(2026年3月末時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。
労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。
【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 事業企画部
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403
QPI月次レポート(2026年8月)
概要
2026年8月度の日本経済は、所定内給与の堅調な伸びが継続する一方で、手取り額を左右する各種控除や労働環境の変化が顕在化した月となった。最新の2026年8月分のQPIによれば、所定内給与QPIは前年同月比+3.50%(前月差+0.09ポイント)となり、前月を上回る高い伸びを示している。一方、可処分所得QPIは前年同月比+2.25%(前月差-1.22ポイント)と、直近の推移と比較して伸びが鈍化した。また、各種控除の動向を見ると、地方税QPIは前年同月比+2.97%(前月差-0.79ポイント)、所得税QPIは同-0.50%(前月差-4.89ポイント)と急激な低下が見られた。他方で社会保険料QPIは同+3.66%(前月差+0.20ポイント)と高止まりしている。総じて、基本給の上昇トレンドは維持されているものの、時間外手当等の諸手当の減少や特定の標本データがもたらす影響など、複雑な要因が指標に表れる結果となっている。

継続するベースアップの効果と可処分所得の動向
2026年8月度の所定内給与QPIは、前年同月比+3.50%となった。前月(+3.41%)と比較して0.09ポイント上昇しており、今年の春闘における賃上げ効果が基本給(所定内給与)にしっかりと定着している状況が窺える。厚生労働省が発表した最新の令和8年(2026年)7月分の毎月勤労統計調査(速報)においても、所定内給与の伸びは前年同月比+4.1%と高い伸びを示しており、マクロ経済全体としても賃金上昇の基調に変化はないと考えられる。
一方、家計の手取り額を示す可処分所得QPIは、前年同月比+2.25%となり、前月(+3.47%)から1.22ポイント鈍化した。この伸び幅の縮小については、所定外給与(時間外手当等の諸手当)の減少が主要な要因として働いていると考えられる。可処分所得の算出には所定内給与に加えて所定外給与、賞与など給与、賞与の総額が含まれるが、実データによる給与内訳の推移を分析したところ、所定内給与が安定した伸びを維持する一方で、8月の所定外給与は前年同月を下回る結果となっていることが確認された。この所定外給与の落ち込みが給与総額全体の伸びを押し下げる方向に作用しており、可処分所得QPIにおける下落幅に沿う結果となっている。昨今の働き方改革に伴う残業時間規制の強化などが労働時間の減少をもたらし、結果として所定内給与の上昇による手取り増の効果を一部相殺している可能性が示唆される。

税金・社会保険料の動向と制度的な影響
8月度のデータにおいて最も特徴的な変化が見られたのは、所得税QPIの動向である。所得税QPIは前年同月比-0.50%となり、前月(+4.39%)から4.89ポイントと大幅に下落してマイナスに転じた。この下落およびマイナスへの転化の主要因としては、令和8年度(2026年度)に実施された「基礎控除の見直し」による影響が強く作用していると考えられる。実データに基づく簡易的な試算として、前年同月の課税支給額(単純平均で約45万円)に今月の可処分所得の上昇率(約2.2%)を加味した水準(約46万円)を設定し、それぞれの年の源泉徴収税額表を用いて比較を行った。その結果、賃上げによって給与水準自体は上昇しているにもかかわらず、基礎控除等の見直し効果がそれを上回り、結果として算出される所得税額が前年を下回るメカニズムが確認された。社会保険料控除後の正確な計算や賞与影響などを除いた簡易推計の範疇ではあるものの、この税制改正による構造的な負担軽減が、所得税QPIを引き下げた決定的な要因であると推察される。
また、地方税と社会保険料の動向を比較すると、両者の控除制度における構造的な違いがデータに表れる結果となった。地方税QPIは前年同月比+2.97%となり、前月(+3.76%)からやや低下し変動を見せている。個人の地方税控除額は原則として6月から翌年5月まで一定であるが、6月の新年度税額改定後に遅れて行われた確定申告による税額修正が影響したと考えられる。前月からの変化幅は約0.8ポイントとやや大きく見えるが、実額ベースの試算では200円弱(約186円程度)の微小な変動に留まっており、実態としては説明可能な範囲である。
一方、社会保険料QPIは前年同月比+3.66%(前月差+0.20ポイント)と高止まりしている。この地方税と社会保険料の推移の差異は、給与実務上の運用ルールの違いに起因している部分が大きいと考えられる。社会保険料は4~6月の支給額を基に年1回9月に定時決定が行われ、その後は大幅な等級変動がない限り控除額が固定化される(雇用保険料を除く)。加えて、社会保険料においては5月より開始された「子ども・子育て支援金」の負担増が定常化していることもあり、こうした制度上の非弾力性が社会保険料QPIの底堅い推移(相対的な上昇)をもたらしていると考察される。

マクロ経済環境と今後の展望
総務省が公表した最新の2026年7月の全国消費者物価指数(コアCPI)は前年同月比+1.8%、総合指数で+1.9%の上昇となっている。現在の可処分所得QPI(+2.25%)の伸びは、前月からの減速は見られるものの、足元の物価上昇率に対しておおむね均衡するか、わずかに上回る水準を保っていると見込まれる。
今後の展望としては、残業時間規制による手取り額への下押し圧力や、社会保険料の持続的な負担増が、家計の実質的な購買力にどの程度の影響を及ぼすかについて引き続き注視が必要である。名目賃金の持続的な上昇が、今後もこれらの負担増を吸収し、「実質的な手取り増」として定着していくかどうかが、日本経済の消費動向を左右する重要な鍵となると思われる。
参照
総務省統計局. 消費者物価指数 (2026年7月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2026年9月10日参照)
厚生労働省. 毎月勤労統計調査 令和8年7月分結果速報. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2607p/2607p.html(2026年9月10日参照)