2025.11.17

プレスリリース

2025年10月度QPI(確報)

「所定内給与のプラス化」に続く「実質手取りのマイナス圏脱却」

 

 株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2025年10月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。

 

 これまで手取りが伸びない状況が続いてきましたが、その状況が改善に向かっていることが示唆されました。所定内給与は、9月度から継続し物価上昇率を上回る結果を記録しました。加えて、可処分所得(手取り額)が、物価上昇率に追いつき、実質的な手取りのマイナス圏から脱却し、家計の負担感にひとまず歯止めがかかった結果となりました。

 

2025年10月度 2025年9月度
所定内給与QPI +3.10% +3.16%
可処分所得QPI +2.90% +2.23%
地方税QPI +1.46% +1.77%
所得税QPI +14.70% +20.86%
社会保険料QPI +2.36% +2.42%

 

※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。

※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。

※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。

 

 2025年11月度データの速報値の公開は2025年12月9日(火)、確報値の公開は2025年12月12日(金)を予定しています。

 

株式会社ペイロールについて

 1989年4月1日設立。創業以来、主に大手企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、260社112万人(2024年3月末時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。

 労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。

 

【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 社長室
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403

 

QPI月次レポート(2025年10月)

概要

 企業の安定的な賃上げは継続しており、所定内給与は前年同月比で3%台の伸びを示している。物価上昇がこの伸びを下回ったことで、所定内給与から見た実質的な賃金はプラス圏が定着しつつある。家計の手取りについては、前月から大幅に改善し、物価上昇率に追いついた。これにより、これまで続いてきた「実質的な手取りの目減り」にひとまず歯止めがかかった形だ。「賃上げはあっても生活が楽にならない」という厳しい状況から、家計の負担感がようやく和らぎ始めた可能性が示された。その裏には、所得税の定額減税の反動という一時的な下押し要因が緩和された影響もあるが、賃上げと連動して上昇を続ける社会保険料の負担増という構造的な問題は依然として残っている。この構造的な「手取りの壁」を乗り越え、実質手取りをプラス圏に押し上げない限り、個人消費の本格的な回復と経済の好循環を実現するのは難しいだろう。

 

手取りが伸びない状況が改善に向かう

 10月度の可処分所得QPIは+2.90%となり、前月の+2.23%から大幅に向上し、+3%も見えてきた。これで3か月連続での上昇となった。これまで手取りが伸びない状況が続いてきたが、その状況が改善に向かっていることが示唆された。

 消費者物価指数(総合)は前年同月比で+2.9%と、前月の+2.7%から比べて上振れしているものの、2%台を維持する結果であった。物価上昇の鈍化もあり、可処分所得QPIと消費者物価指数の前年同月比が同水準となったことで、ひとまず実質的な手取りの減少が止まり、家計の負担感はこれまでと比べて抑えられつつあると言えるのではないだろうか。手取りの観点から見た実質的な賃上げが実現されるまで、あと一歩というところだろう。

 

 

 一方、所定内給与QPIは+3.10%となり、3%台は維持したものの前月から0.06ポイントの下落となった。10月度給与においては、所定内給与QPIの変動は従業員の出入りによる部分が大きいため、給与水準が下がったというわけではないだろう。とはいえ、所定内給与QPIの下落は事実であり、今後下落傾向が継続しないか注視していく必要があるだろう。

 毎月勤労統計調査では、前月と同様にQPIの結果を大幅に下回る結果となっている。現金給与総額(5人以上の事業所)は前年同月比+1.9%、実質賃金指数は-1.4%となっており、厳しい状況が表れている。

 

 

 

定額減税の影響の緩和が手取りに反映されたか

 9月度の所得税QPIは+20.86%であり、2024年6月の定額減税の影響が大きく反映されたものであり、可処分所得の伸びを押し下げる大きな要因となっていた。10月度の所得税QPIも+14.70%となっており、依然として高い状況が続いているが、9月度と比べると伸び率が小さくなっている。この所得税負担の縮小が、所定内給与の安定的な伸びを可処分所得に反映させる一つの要因となったのだろう。

 一方で、地方税QPIは+1.46%、社会保険料QPIは+2.36%と、比較的安定的な変動幅に収まっており、今後も賃金の上昇に合わせて増加が続くことが予想される。

 

 

「実質手取りマイナス」の脱却と、依然として残る社会保険料の壁

 所定内給与QPI(+3.10%)が堅調な伸びを維持し、物価上昇率(+2.9%)を上回ったことで、所定内給与の実質的なプラス圏が定着しつつある。これは企業の賃上げ努力と物価の安定が両立し始めた好材料である。さらに今月は、可処分所得QPIも+2.90%と物価上昇率に追いつき、実質手取りのマイナス圏からも脱却した。家計の負担感にひとまず歯止めがかかった形であり、経済の好循環に向けた次なる一歩と言える。

 しかし、この手取りの改善は、9月度に+20.86%となっていた所得税QPIが、10月度は+14.70%へと伸び率が鈍化した影響が大きい。一時的な下押し要因が緩和されたことで、堅調な給与の伸び(+3.10%)が、ようやく手取り(+2.90%)に反映され始めたに過ぎない。むしろ、賃上げと連動して上昇を続ける社会保険料QPI(+2.36%)という構造的な負担は、依然として手取りの伸びを確実に抑制している。

 つまり、日本経済は「所定内給与の実質的なプラス化」に続き、「実質手取りのマイナス圏脱却」という第二の峠を越えた。しかし、所得税における定額減税の反動という一時的な嵐が収まりつつあることで、社会保険料負担という「手取りの壁」の本体が、より鮮明に見えてきたとも言える。この構造的な壁を乗り越え、実質的な手取りをプラス圏へと押し上げる持続的な賃上げと制度の見直しが実現しない限り、国民が豊かさを実感し、本格的な個人消費の回復に至る道のりは依然として険しいままだろう。

 

参照

総務省統計局. 消費者物価指数(2025年9月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2025年11月13日参照)

厚生労働省. 毎月勤労統計調査 令和7年9月分結果速報. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/2509p/2509p.html(2025年11月13日参照)