2025年8月度QPI(確報)
8月の手取り額、実質1%強の減少
株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2025年8月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。
賃上げは続いているものの、その上昇率は物価の上昇に追いついていないことが明らかになりました。実質賃金は、政府が目標に掲げる「物価上昇を上回る賃上げ」は実現しておらず、労働者の実質賃金は減少し続けています。可処分所得(いわゆる手取り額)は、前年比でプラスに転じたものの、物価上昇が重く、家計が負担を感じる状況が続きます。
| 2025年8月度 | 2025年7月度 | |
| 所定内給与QPI | +3.05% | +2.97% |
| 可処分所得QPI | +2.05% | -1.52% |
| 地方税QPI | +1.97% | -0.41% |
| 所得税QPI | +29.29% | +46.50% |
| 社会保険料QPI | +2.15% | +1.81% |
※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。
※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。
※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。
2025年9月度データの速報値の公開は2025年10月9日(木)、確報値の公開は2025年10月15日(水)を予定しています。
株式会社ペイロールについて
1989年4月1日設立。創業以来、主に大手企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、260社112万人(2024年3月末時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。
労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。
【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 社長室
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403
QPI月次レポート(2025年8月)
概要
企業の安定的な賃上げは継続しており、名目賃金は3%台の伸びを示している。しかし、それを上回るペースで物価上昇が続いているため、実質的な賃金は依然としてマイナスの状況である。家計の手取りについても、名目上はプラスに転じたが、物価高や社会保険料の負担増を考慮すると、実質的には目減りが続いている。このように「賃上げはあっても生活が楽にならない」という状況が長期化すれば、個人消費が冷え込み、物価高と景気後退が同時に進む可能性もある。賃上げの効果を国民の生活実感の向上と経済の好循環につなげるためには、実質的な所得を増やすためのさらなる取り組みが求められる。
賃上げの動向:期待と現実のギャップ
所定内給与QPIは+3.05%となり、前月の+2.97%から上昇した。一時的に2025年7月に+2%台まで落ち込んだものの、すぐに+3%台に戻っており、企業の安定的な賃上げが継続していることがうかがえる。ただし、この水準は2025年4月の+3.64%と比べると0.6ポイントの下落となっており、下落が続いてきたことを考えると今後の推移に注視する必要があるだろう。

この伸び率と並行して、同月の消費者物価指数(総合)は前年同月比で+3.1%の上昇を記録している。物価上昇が継続しており、その上昇率と比べて賃金の上昇が下回る状況が続く中で、労働者の購買力は実質的に低下しているのが現状である。働く人々は、いくら給料が上がっても生活が楽にならないという状況が長期化しつつある。
家計の動向:手取りは増加に転じたが実質的にはマイナス
可処分所得QPIは+2.05%と、前月の-1.52%から大きく持ち直し、2か月連続でマイナス水準が続いてきたがプラスに転じた。残業代が増加したことや減税効果の揺り戻しの影響が小さくなったことなどが可処分所得(手取り額)の増加につながったのだろう。

ただし、物価上昇率+3.1%を加味すると、可処分所得は実質的には1%程度減少していると推計される。可処分所得の実質減の継続は個人消費を鈍化させ、物価上昇が続く中で景気が悪化することが懸念されるため、実質的な可処分所得がプラスになるような取り組みが求められることになるだろう。
税・社会保険料控除の動向:縮小する定額減税による税額の増加
可処分所得はプラスに転じたものの、税・社会保険料負担も増加が続いている。
地方税QPIは+1.97%となり、マイナス水準だった前月から一転、増加に転じた。本来であれば、6月に決定された地方税額を一定額支払うはずであるが、地方税額決定と給与支払いタイミングのズレなどから支払額が変動する場合もある。また、算出対象企業や各企業内の従業員は出入りが発生するため、一定のズレが発生するものとみられる。

所得税QPIは+29.29%と高いプラス水準を維持している。とはいえ、前月の+46.50%という高水準から比べると大幅に下落した。そのため、可処分所得を引き下げる効果は小さくなっており、可処分所得QPIをマイナス水準まで引き下げるほどの影響は無かったとみられる。
また、社会保険料QPIは+2.15%となり、引き続き増加傾向が続く。賃上げに伴って社会保険料の標準報酬月額が上昇することで、社会保険料の支払いも増加しており、金額ベースでの負担の増大につながっている。
結論として、名目的な賃上げは+3%台の水準に戻ったものの、それを上回る物価上昇が続いており、実質的な賃金は依然としてマイナスの状況にある。可処分所得はプラスに転じたが、物価上昇による負担増を考慮すると実質的には減少しており、労働者の生活実感の改善には至っていない。このまま賃上げが物価上昇に追いつかず、労働者の購買力の低下が続けば、物価高と景気後退が同時に進行する懸念もある。そのため、賃上げの効果を国民生活の向上と経済の好循環につなげるためには、実質的な手取りを増やすための更なる政策対応が求められるのではないだろうか。
参照
総務省統計局. 消費者物価指数(2025年7月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2025年9月12日参照)