2025年7月度QPI(確報)
7月の手取り額、実質5%弱の減少
株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2025年7月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。
賃上げは続いているものの、その上昇率は物価の上昇に追いついていないことが明らかになりました。実質賃金は、政府が目標に掲げる「物価上昇を上回る賃上げ」は実現しておらず、労働者の実質賃金は減少し続けています。可処分所得(いわゆる手取り額)は、前年比で2か月連続のマイナスを記録し、家計への負担が増しています。
| 2025年7月度(確報) | 2025年6月度 | |
| 所定内給与QPI | +2.97% | +3.11% |
| 可処分所得QPI | -1.52% | -5.23% |
| 地方税QPI | -0.41% | +10561.37% |
| 所得税QPI | +46.50% | +520.01% |
| 社会保険料QPI | +1.81% | +1.61% |
※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。
※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。
※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。
2025年8月度データの速報値の公開は2025年9月9日(火)、確報値の公開は2025年9月12日(金)を予定しています。
株式会社ペイロールについて
1989年4月1日設立。創業以来、主に大手企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、260社112万人(2024年3月末時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。
労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。
【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 社長室
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403
QPI月次レポート(2025年7月)
概要
2025年7月度の給与動向を分析した結果、賃上げは継続しているものの、その歩みは加速する物価上昇の波にのまれている実態が明らかになった。政府が掲げる「物価上昇を上回る賃上げ」という目標は依然として実現に至っておらず、労働者の実質賃金は目減りし続けている。さらに深刻なのは、可処分所得(手取り額)が前年比で2か月連続のマイナスを記録したことである。家計に直接的な圧迫が生じ、消費者のマインドが冷え込む兆候が顕著に表れており、今後の個人消費の動向に暗い影を落とすことが強く懸念される。
賃上げの動向:期待と現実のギャップ
所定内給与QPIは+2.97%となり、前月の+3.11%から下落し、ついに+2%台に落ち込んだ。この伸び率は、2024年6月以降続いていた3%以上の水準を割り込んだことを意味し、多くの企業がベースアップを継続的に実施していることの証左ではあるものの、その勢いに陰りが見え始めている。賃上げ率は2025年4月に記録した+3.64%をピークに、下落傾向をたどっている。

この伸び率と並行して、同月の消費者物価指数(総合)が前年同月比で+3.3%の上昇を記録したことは、極めて重要な意味を持つ。賃金の上昇が物価の上昇率に追いついていないため、数字上の賃上げはあっても、労働者の購買力は実質的に低下しているのが現状である。働く人々は、いくら給料が上がっても生活が楽にならないという、実感を伴う厳しい現実に直面している。
家計の動向:手取り減少がもたらす消費の停滞
可処分所得QPIは-1.52%と、前月の-5.23%からは持ち直したものの、2か月連続でマイナス圏にとどまった。この可処分所得(手取り額)の減少は、昨年に実施された定額減税の反動が最も大きな要因である。前年同月は減税効果で手取りが増加していたため、今年7月は前年との比較で減少幅が大きく見えている。また、賞与の減額を賃上げの原資にする企業もある。6月・7月は賞与支給をする企業も多いため、これも可処分所得減少の要因の一つであろう。

さらに、物価上昇率+3.3%を加味すると、可処分所得は実質的に5%近く減少したと推計される。この手取りの減少は、個人の消費行動に直接的なブレーキをかけることとなる。高まる物価に対して家計の余裕が失われれば、人々は不要不急の支出を控えざるを得ない。こうした消費者の財布の紐が固くなる状況が、近ごろの個人消費の伸び悩みを引き起こしている主要な原因の一つであると分析している。
税・社会保険料控除の動向:定額減税の仕組みがもたらした影響
可処分所得がマイナスとなった背景をさらに深く掘り下げると、控除項目の変動がその核心にあることがわかる。特に、所得税と地方税の定額減税の実施方法の違いが、今回の現象を招いた。

地方税QPIは-0.41%となり、税額が前年比で減少した。地方税の減税は、2024年6月の税額を一律0円とし、年間の総額から減税額を除いた金額を7月から翌5月の11か月で案分する方式であったため、この期間で税額が増加することが多くあった。一方で、所得税QPIは+46.50%と高いプラス水準を維持している。所得税の減税は、2024年6月から減税額を差し引き、減税分の減額が完了するまで継続する方式であったため、翌月以降も税額が低くなっていた。その結果、2025年7月は前年同月と比較して所得税額が増加し、この大幅な増加分が可処分所得全体を押し下げる主因となった。
また、社会保険料QPIは+1.81%となり、継続的に増加する状況にある。賃上げに伴って社会保険料の標準報酬月額が上昇することで、社会保険料の支払いも増加しており、金額ベースでの負担の増大につながっている。
結論として、定額減税の反動で手取り額の前年同月比での減少が加速している面はあるものの、所定内給与増に伴う税の支払増に累進税率の影響が加わり、税負担は恒常的に増えており、手取り額を押し下げる要因になっている。この影響は今後数か月にわたり継続する可能性が高く、家計の動向を今後も注視していく必要がある。
参照
総務省統計局. 消費者物価指数(2025年6月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2025年8月14日参照)