2026年5月度QPI(確報)
春闘が本格反映され所定内給与の伸びが拡大、社会保険料の上昇も顕在化
株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2026年5月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。
5月の算出結果では、可処分所得QPIが前年同月比+3.70%となり、前月の+4.42%からはやや鈍化したものの、引き続き堅調な上昇率を維持しています。これは消費者物価指数(4月時点+1.4%)を明確に上回っており、家計の実質的な手取りがプラス圏で推移していることを示唆しています。この堅調な伸びの背景には、前年春季の可処分所得の伸びが低水準であったことに対するベース効果の反動が含まれていると考えられます。
一方で、所定内給与QPIは前年同月比+3.23%となり、前月(+2.88%)からは伸び幅が明確に拡大しました。これは、春闘等における賃上げが4月だけでなく5月にかけてより多くの企業の基本給に反映された結果であると推察されます。税および保険料の動向については、所得税QPIが前年同月比+2.95%となり前月(+4.19%)から縮小したのに対し、社会保険料QPIは+2.78%となり前月(+2.34%)から明確に上昇しました。当月から新たに「子ども・子育て支援金(被保険者負担:0.115%)」の控除が開始されたことが影響しており、額面給与の増加が可処分所得の増加にそのまま直結しにくい構造が顕在化しつつある点には注視が必要です。
| 2026年5月度 | 2026年4月度 | |
|---|---|---|
| 所定内給与QPI | +3.23% | +2.88% |
| 可処分所得QPI | +3.70% | +4.42% |
| 地方税QPI | +2.75% | +2.77% |
| 所得税QPI | +2.95% | +4.19% |
| 社会保険料QPI | +2.78% | +2.34% |
※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。
※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。
※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。
2026年6月度データの速報値の公開は2026年7月9日(木)、確報値の公開は2026年7月14日(火)を予定しています。
株式会社ペイロールについて
1989年4月1日設立。創業以来、主にエンタープライズ企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、279社123万人(2026年3月末時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。
労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。
【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 事業企画部
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403
QPI月次レポート(2026年5月)
概要
2026年5月度の日本経済は、各企業における春闘の妥結内容が給与へ本格的に反映され始める時期を迎え、賃金上昇の波がより広範に波及していることが確認された。最新の2026年5月分QPIデータによれば、所定内給与QPIは前年同月比+3.23%となり、前月の+2.88%から伸び幅が明確に拡大した。一方で、可処分所得QPIは前年同月比+3.70%と、前月の高い伸び(+4.42%)からはやや鈍化したものの、引き続き堅調な上昇率を維持している。この背景には、前年春季の可処分所得の伸びが低水準(2025年3月時点で+0.84%、5月時点で+2.34%)であったことに対するベース効果の反動が含まれていると考えられる。また、当月から「子ども・子育て支援金」の控除が開始されたことに伴い、社会保険料QPIが前年同月比+2.78%へと上昇し、手取り額を一部抑制する要因として顕在化しつつある点には注視が必要である。
所定内給与の推移と春闘の本格反映
2026年5月度の所定内給与QPIは、前年同月比+3.23%となった。前月(+2.88%)と比較して増加率が拡大しており、春闘等における賃上げが、4月だけでなく5月にかけてより多くの企業の基本給に反映された結果であると推察される。なお、厚生労働省が発表した4月の毎月勤労統計調査(速報)における一般労働者の所定内給与の伸びは前年同月比+3.7%と堅調であり、実質賃金も+1.9%と4か月連続でプラスを維持していることから、マクロ経済全体としても賃金上昇の裾野が順調に広がっていることが裏付けられている。

可処分所得の動向とベース効果の検討
家計の手取り額を示す可処分所得QPIは、前年同月比+3.70%と引き続き高い伸び率を示した。前月の+4.42%という極めて高い水準からは落ち着きを見せたものの、依然として力強い水準である。しかしながら、この高い数値を評価する際には、前年春季における「ベース効果」を考慮する必要がある。2025年3月の可処分所得の伸び率は+0.84%、5月は+2.34%と、低水準から緩やかな伸びにとどまっていた時期が存在する。今回の+3.70%という伸びには、こうした過去の抑制局面からの反動という側面が含まれており、賃上げの純粋な効果以上に数値が上振れしている可能性がある点に留意すべきである。
制度変更に伴う社会保険料の上昇と税金への波及
5月度のデータにおいて特筆すべきは、社会保険料QPIが前年同月比+2.78%となり、前月(+2.34%)から明確に上昇した点である。この背景には、5月分から新たに控除が開始された「子ども・子育て支援金(被保険者負担:0.115%)」の天引きが直接的に影響していると推察される。給与のベースアップが行われた一方で、こうした新たな控除項目が追加されたことにより、額面給与の増加が手取り額(可処分所得)の増加にそのまま直結しにくい構造が顕在化しつつある。また、税金関連では、所得税QPIは+2.95%となり、前月の+4.19%から縮小した。これは可処分所得の伸び率縮小とおおむね連動する動きであり、4月に支給された一部の春季賞与等の影響が一巡し、平常の給与サイクルに戻りつつあることが要因であると考えられる。

物価動向と実質的な手取り増への展望
総務省が公表した2026年4月の消費者物価指数(CPI・総合)は前年同月比+1.4%と、安定した推移を継続している。5月度の可処分所得QPI(+3.70%)がこの物価上昇率を明確に上回っている現状は、前述のベース効果を含んでいるとはいえ、家計の実質的な手取りが引き続きプラス圏を維持していることを示唆している。今後の展望として、春闘等による賃上げが順調に定着していることは好材料である一方、社会保険料負担の増加や、円安進行に伴う輸入物価上昇など、外部環境のリスク要因は依然として存在する。6月から地方税が新年度に切り替わり税額の変更、秋以降には標準報酬月額の改定による社会保険料の再調整も控えており、名目賃金の上昇が一時的な反動にとどまらず、「持続的かつ実質的な手取り増」として定着していくかどうかが、引き続き重要な焦点となる。
参照
総務省統計局. 消費者物価指数 (2026年4月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2026年6月11日参照)
厚生労働省. 毎月勤労統計調査 令和8年4月分結果速報. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2604p/2604p.html(2026年6月11日参照)