2025.12.12

プレスリリース

2025年11月度QPI(確報)

手取りの改善は一時的、再びマイナス圏へ逆戻り

 

 株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2025年11月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。

 

 10月度に実質手取りがプラスに転じましたが、継続せずマイナスに逆戻りしていることが示唆されました。10月に物価上昇に追いつく形となった手取り額の可処分所得QPIでしたが、11月算出結果では大きく下落し、実質的な手取りの伸びはマイナス圏に逆戻りする結果となりました。その背景には残業の抑制や不定期の手当ての影響があると考えられ、安定した実質的な手取りの上昇には達していないと示唆されました。

 

2025年11月度 2025年10月度
所定内給与QPI +2.94% +3.10%
可処分所得QPI +1.84% +2.90%
地方税QPI +1.42% +1.46%
所得税QPI +11.89% +14.70%
社会保険料QPI +2.28% +2.36%

 

※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。

※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。

※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。

 

 2025年12月度データの速報値の公開は2026年1月14日(水)、確報値の公開は2026年1月19日(月)を予定しています。

 また、来月は年収情報の公表も予定しています。

 

株式会社ペイロールについて

 1989年4月1日設立。創業以来、主に大手企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、260社112万人(2024年3月末時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。

 労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。

 

【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 社長室
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403

 

QPI月次レポート(2025年11月)

概要

 企業の安定的な賃上げは継続しているものの、所定内給与QPIは+2.94%と、3%台の伸びを維持できず減速した。この減速と、可処分所得QPIの急落(+1.84%)が重なった結果、実質的な手取りは再びマイナス圏に逆戻りした可能性が高い。

 可処分所得の急落の主因は、所定外給与(残業代や不定期手当てを含む)が前年同月比で大きく減少したことにある。所定内給与の上昇は残業単価の上昇に直結するため、企業は総人件費を抑制する残業時間削減に取り組んだ可能性を指摘した。残業時間は営業日数とも相関があるなど、可処分所得の揺らぎにつながっている。

 10月度は所得税負担の緩和により、一時的に手取りが改善したが、その改善は持続せず、家計の負担感は再び厳しさを増していると考えられる。所得税の変動という一時的な要因が落ち着きつつある中で、賃上げの勢いの鈍化が、手取りの伸びを抑制している実態が浮き彫りになった。また、これは不定期手当により、10月に一時的に上昇した可能性があり、今後も継続した観察が必要である。

 この構造的な「手取りの壁」を乗り越え、実質手取りをプラス圏に押し上げない限り、個人消費の本格的な回復と経済の好循環を実現するのは難しいだろう。

 

手取りの改善は一時的、再びマイナス圏へ逆戻り

 2025年11月度の可処分所得QPIは+1.84%となり、前月の+2.90%から大幅に悪化している。これにより、3か月連続での上昇トレンドは途絶えた。10月の消費者物価指数(総合)は前年同月比で+3.0%であったことを踏まえると、可処分所得QPI(+1.84%)はこれを大幅に下回る結果となる。これは、10月にひとまず脱却した「実質手取りのマイナス圏」に再び逆戻りしたことを意味する。家計の負担感は再び強まっており、消費の回復にとって大きな懸念材料となる。

 

 

 2025年10月の毎月勤労統計調査では、依然としてQPIの結果を大幅に下回る厳しい状況が続いている。現金給与総額(5人以上の事業所)は前年同月比+1.9%、実質賃金指数は-0.7%と、10か月連続のマイナスとなっており、こちらも物価上昇に賃金上昇が追いつかない状況が続いていることが表れている。

 

 所定内給与QPIは+2.94%となり、前月の+3.10%から0.16ポイントの下落となった。企業の安定的な賃上げ基調は維持されているものの、3%台の伸びを維持できず、物価指数(総合)の伸びよりも低い水準となったことは、今後の賃上げの勢いの持続性について懸念を残す結果であると言える。

 

 

所定外給与の増減で揺らぐ手取り

 可処分所得は、所定外給与(残業代や不定期手当て)を含めた給与総額から法定控除を除いたものと定義されるが、多くの企業で残業代が前年同月(2024年11月支払い分)比で減少していることが確認された。その結果、可処分所得の伸びが大きく抑制され、QPIの急落につながったと考えられる。

 残業代減少の明確な根拠は定かではないものの、これは企業の残業時間抑制が影響している可能性が考えられる。所定内給与QPIの伸びが示す通り、企業は継続的な賃上げを実施している。所定内給与が上昇すると、法定割増率が適用される残業代の単価も直接的に上昇し、人件費の増加が加速する構造にある。このようなコスト構造の変化を背景に、企業は総人件費の抑制と収益性の維持を図るため、残業時間削減を考えることになるだろう。

 また、営業日数も残業時間を変動させる要因の一つと考えられ、前月の営業日数と所定外給与との間には軽微な相関が確認されている。

 10月の可処分所得の上昇は、2024年6月の定額減税による所得税の下落の影響が大きいと想定していたが、所定外給与の影響で一時的に上昇した可能性も残り、継続した観察が必要である。

 このような所定外給与の増減による手取りの大きな揺らぎは、日本の家計収入がベースアップによる賃上げだけでは安定しない、脆弱な構造にあることを示唆している。賃上げの効果を家計が真に実感するためには、残業抑制圧力に影響を受けない、持続的な賃上げと、業務負荷の変動を抑える平準化、あるいは生産性向上が求められるだろう。

 家計の負担を踏まえた賃上げ状況を正確に把握するためには、QPIの推移と併せて、残業代の抑制が継続するかを注視する必要がある。

 

定額減税の影響の緩和が続くも、所定外給与の減少に打ち消される

 9月度(+20.86%)にピークを迎えた所得税QPIは、10月度(+14.70%)に続き、11月度も+11.89%へと伸び率が鈍化した。これは、2024年6月の定額減税による一時的な反動(所得税負担の拡大)が徐々に緩和されつつあることを示している。

 

 

 この所得税負担の縮小は、所定内給与の伸びを手取りに反映させる方向に作用するはずだが、可処分所得QPI(+1.84%)は逆に大幅に低下した。これは、前項で述べた所定外給与(残業代や不定期手当て)が減少した結果、所得税負担の縮小による手取り増加を打ち消した結果であると言えるだろう。

 

実質手取りの再度のマイナス転落と家計の脆弱性

 所定内給与QPI(+2.94%)は堅調な伸びを維持したものの、物価上昇率(+3.0%)との差が縮小し、可処分所得QPI(+1.84%)は物価上昇率に遠く及ばない水準となった。これにより、10月に一時的に脱却した「実質手取りのマイナス圏」に再び逆戻りしたと評価せざるを得ない。

 この手取りの再度のマイナス転落は、所定内給与の伸びの減速に加え、企業の残業抑制による所定外所得の急減という一時的かつ構造的な要因によって引き起こされたと推察された。所得税の定額減税の反動という一時的な下押し圧力が収束に向かう中で、この状況は、賃上げの恩恵が残業代の多寡という変動要素によって容易に打ち消されてしまうという、日本家計収入の脆弱な構造を改めて浮き彫りにした。

 国民が豊かさを実感し、本格的な個人消費の回復と経済の好循環を実現するためには、残業代の変動に左右されない持続的な高水準の賃上げ、および生産性の向上が不可欠な課題である。

 

参照

総務省統計局. 消費者物価指数(2025年10月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2025年12月10日参照)

厚生労働省. 毎月勤労統計調査 令和7年10月分結果速報. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/2510p/2510p.html(2025年12月10日参照)