2026.03.13

プレスリリース

2026年2月度QPI(確報)

所得控除拡大による所得税負担の減少で手取りが増加

 

 株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2026年2月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。

 

 1月に可処分所得QPIから物価上昇率を減じて算出した実質的な手取りの伸びが大幅なプラス圏へと拡大していましたが、2月の算出結果でもこの傾向が定着し、物価上昇率を1.4ポイント上回る水準を維持しています。その背景には、1月から続く所得控除拡大による所得税負担の抑制効果があります。また、所定内給与QPIは継続して3%を超える水準にあり、1月時点の物価上昇率(+1.5%)を倍以上上回っています。一方で、物価上昇リスクが高まりつつあり、今後の推移に注意が必要です。

 

2026年2月度 2026年1月度
所定内給与QPI +3.11% +3.19%
可処分所得QPI +2.90% +2.96%
地方税QPI +2.13% +2.03%
所得税QPI +0.93% +0.67%
社会保険料QPI +2.34% +1.84%

 

※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。

※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。

※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。

 

 2026年3月度データの速報値の公開は2026年4月9日(木)、確報値の公開は2026年4月14日(火)を予定しています。

 

株式会社ペイロールについて

 1989年4月1日設立。創業以来、主に大手企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、260社112万人(2024年3月末時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。

 労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。

 

【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 社長室
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403

 

QPI月次レポート(2026年2月)

概要

 2026年2月度の日本経済は、1月に確認された「手取り増」への構造的な転換が、着実な歩みを持って定着しつつあることを示した。最新のQPIデータによれば、所定内給与QPIは前年同月比+3.11%と、2か月連続で3%を超える高い伸びを記録し、企業の賃上げに対する積極的な姿勢が継続していることが改めて浮き彫りとなった。これに呼応するように、家計の真の購買力を示す可処分所得QPIも+2.90%と、3.0%の大台に迫る高水準を維持している。2025年を通じて家計を苦しめてきた「賃上げの恩恵が税・社会保険料に食いつぶされる」という閉塞感は、制度的な後押しによって過去のものとなりつつある。

 しかし、足元では新たな外部リスクとして地政学的な緊張が急速に高まっている。アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃を背景とした原油価格の上昇懸念は、エネルギー供給の不透明感を通じて世界的なインフレ再燃の懸念を呼び起こしている。現時点において、2月度のQPIや最新の国内物価動向にその直接的な影響は顕在化していないものの、ようやく実現した「実質的な手取りプラス」の状況を脅かす潜在的な影として、今後の動向を厳密に注視していく必要がある。

 

所得税負担の抑制と制度的恩恵の定着

 2026年2月度のデータにおいて最も注目に値するのは、所得税負担の伸びが引き続き極めて低い水準に抑えられているという事実である。所得税QPIの伸び率は前月の+0.67%から微増したものの、+0.93%と1%を割り込む低水準を維持しており、前年末の2025年12月度に見られた+8.63%という伸びと比較すれば、その負担増のペースが劇的に鈍化していることは明白である。この抑制効果の背景には、2024年6月の定額減税の反動の影響で見られた所得税増の収束と2026年1月1日以降の給与から適用された「令和8年分給与所得の源泉徴収税額表」による影響が色濃く反映されている。

 

 

 この新税額表は、近年の物価高騰とそれに伴う賃金上昇を踏まえ、基礎控除および給与所得控除の枠組みを実質的に拡充したものであり、国民の税負担を軽減する実質的な減税措置として機能している。その結果、額面給与が前年を大きく上回るペースで上昇していても、実際に天引きされる所得税額の伸びが給与の伸びを下回るという、家計にとって極めて有利な「逆転現象」が継続しているのである。また、2024年6月の定額減税では一人当たり3万円(3人家族で2人を扶養している場合は9万円)の所得税減税が行われ、1か月の所得税から控除しきれないものは翌月から控除されたため、2024年12月ごろまで影響がみられた。その反動として2025年6月から12月ごろまで前年同月比での所得税増のフェーズが見られたが完全に収束し、現在は税制面での支援が賃上げの成果を直接的に「手取り」へと変換する強力なエンジンとして機能し始めている。

 

実質的な手取り増の継続

 家計の購買力を測る上で極めて重要な「実質的な手取り」の状況は、2月度においてさらなる改善を見せている。総務省統計局が発表した2026年1月度の消費者物価指数(CPI・総合)は前年同月比+1.5%となり、前月の+2.1%から上昇幅が大幅に縮小した。これはエネルギー価格の下落や食料品の上昇率鈍化によるもので、物価上昇の勢いは46か月ぶりに1%台まで落ち着きを見せており、2026年2月については、同程度の水準か、さらに下落することも考えられる。

 

 

 この物価上昇率の鈍化に対し、2月度の可処分所得QPIは+2.90%と高い伸びを維持している。1月の物価指数と比較すると、可処分所得の伸びが物価上昇を1.4ポイント上回るという、極めて大きなプラスの乖離が生じている。前月の可処分所得QPI+2.96%からは若干落ち込んだものの、3%近い上昇率は継続している。これは、毎月勤労統計調査の1月速報で実質賃金がプラスに転じたことと整合する結果である。

 

給与と手取りの乖離の縮小

 過去のレポートで継続的に課題として指摘してきた、所定内給与(額面)と可処分所得(手取り)の間の「損失」とも呼べる乖離は、2月度において一段と縮小を見せた。

 

 

 2025年11月時点では、給与が前年比で+2.94%伸びても、社会保険料や所得税の負担増によって手取りは+1.84%に留まり、約1.1ポイントもの乖離が生じていた。しかし、2026年2月度においては、所定内給与の伸び(+3.11%)と手取りの伸び(+2.90%)の差はわずか0.21ポイントにまで縮小している。社会保険料QPIも+2.34%と、給与の伸びを下回って安定的に推移しており、賃上げの成果を税・社会保険料が食いつぶす「手取りの壁」は、さらに解消に近づいたと評価できる。

 

賃上げ上昇の期待と物価高騰の懸念

 2026年2月度のQPI結果は、日本経済が「成長と分配の好循環」の歯車を本格的に回し始めたことを改めて裏付けた。給与が安定的に上昇し、それが適切な税制支援によって手取りの増加に直結する構造は、個人消費の回復に向けた極めて盤石な基礎となる。

 今後は、2026年春闘の回答が実際の給与に反映され始める4月以降、この傾向がさらに加速することが期待される。一方で、アメリカ及びイスラエルによるイラン攻撃に端を発する地政学リスクは、現時点では国内物価に現れてはいないものの、今後原油価格を通じてインフレを再燃させる恐れがある。もし1%台まで低下したCPIが再び上昇に転じれば、現在確保されている1.4ポイントという「実質手取りの増加」が縮小するリスクも孕んでいる。家計がようやく手にした「賃上げの実感」を、いかに外部ショックから守り抜くかが2026年度の大きな焦点となるだろう。

 

参照

総務省統計局. 消費者物価指数(2026年1月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2026年3月11日参照)

厚生労働省. 毎月勤労統計調査 令和8年1月分結果速報. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2601p/2601p.html(2026年3月11日参照)