2026.04.14

プレスリリース

2026年3月度QPI(確報)

額面・手取りの伸びは物価を上回り、手取りの増加がさらに拡がる

 

 株式会社ペイロールと株式会社QUICKが共同で開発した新しい賃金指標「QPI(QUICKペイロール賃金インデックス)」に関しまして、2026年3月度のQPI確報、QPI月次レポートを公表いたします。

 

 3月の算出結果では、可処分所得QPIが前年同月比+3.43%となり、物価上昇率(1月時点+1.5%)を約1.9ポイント上回る大幅なプラス水準を記録しました。昨年の伸び(+0.84%)が低かったことによる反動の側面はあるものの、所得税負担の伸びが+0.27%と引き続き極めて低水準に抑制されていることが、手取り増の主な要因となっています。所定内給与QPIも+3.22%と3%を超える高い伸びを維持しており、額面・手取りともに物価を上回る推移が鮮明です。一方で、地政学リスク等に伴う物価再上昇の懸念は依然として残っており、今後の実質的な購買力の動向には注意が必要です。

 

2026年3月度 2026年2月度
所定内給与QPI +3.22% +3.11%
可処分所得QPI +3.43% +2.90%
地方税QPI +2.26% +2.13%
所得税QPI +0.27% +0.93%
社会保険料QPI +2.46% +2.34%

 

※詳細は以下にございます、QPI月次レポートをご参照ください。

※数値は四捨五入済みのため、前月からの差が記載されている数値の引き算と一致しない場合があります。

※分析に用いたデータは、契約にて同意いただいたお客様のみを対象とし、個人・個社が特定されないようにした上で利用しております。

 

 2026年4月度データの速報値の公開は2026年5月14日(木)、確報値の公開は2026年5月19日(火)を予定しています。

 

株式会社ペイロールについて

 1989年4月1日設立。創業以来、主に大手企業を対象として給与計算業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供しており、257社114万人(2026年3月時点)の給与計算業務を受託しています。ペイロールの汎用型給与計算サービス「HR BPaaS(エイチアールビーパース)」は、独自開発したクラウド人事給与ソフトと給与計算BPOを統合したサービスで、お客様固有の複雑な給与計算ロジックに対応しつつ、全てのお客様で共通する業務の標準化を推し進めることで、高い柔軟性と拡張性を併せ持っているところが特徴です。

 労働人口が不足していく日本において、ペイロールは、人事部が抱える専門性の高いオペレーション業務を担うソフトインフラ企業となり、人事部がより戦略的な業務に注力できる環境を支えます。

 

【お問い合わせ窓口】
株式会社ペイロール 社長室
Mail: qpi_analysis@payroll.co.jp
TEL: 03-5520-1403

 

QPI月次レポート(2026年3月)

概要

 2026年3月度の日本経済は、企業の賃上げに対する前向きな姿勢と、税制面での支援効果が重なり、家計の「手取り増」がさらに鮮明となった月であった。最新の2026年3月分QPIデータによれば、所定内給与QPIは前年同月比+3.22%と、前月の+3.11%から伸び幅を拡大させ、高い水準を維持している。特筆すべきは可処分所得QPIであり、前年同月比+3.43%と、前月の+2.90%を上回る大幅な上昇を記録した。

 この上昇の背景には、昨年度の低い伸び率に対する反動という側面があるものの、実質的な所得税負担の抑制が継続していることが大きく寄与している。物価上昇率が落ち着きを見せる中、賃上げが着実に手取り額へと反映される構造が定着しつつあり、家計の購買力向上に向けた前向きな推移が続いている。

 

所定内給与の底堅い推移と春闘への期待

 2026年3月度の所定内給与QPIは、前年同月比+3.22%となった。これは2026年1月(+3.19%)、2月(+3.11%)に続く3%台の推移であり、企業の賃上げ姿勢が一時的なものではなく、継続的なトレンドとなっていることを示している。この数値は、厚生労働省が発表した2月の毎月勤労統計調査(速報)における所定内給与の伸び(+3.3%)とも概ね整合的である。

 

 

 2026年春闘の回答が本格的に給与へ反映されるのは4月以降となるが、2025年度も継続して高い伸びを維持している事実は、多くの企業において年度末に向けた賃金改定やベースアップの定着が進んでいることを示唆している。所定内給与が安定して3%を超える水準で推移していることは、日本経済が長らく課題としてきた「賃金と物価の好循環」の実現に向けた、強固な土台となりつつあると推察される。

 

可処分所得の加速と「ベース効果」の検討

 家計の手取り額を示す可処分所得QPIは、前年同月比+3.43%と、前月の+2.90%からさらに加速した。この高い伸び率を評価する際には、前年同期との比較、いわゆる「ベース効果」を考慮する必要がある。

 2025年3月度の可処分所得QPIは+0.84%と、極めて低い水準に留まっており、残業代を含む手取り額が抑制されていた可能性がある。今年度の3.43%という伸びは、昨年この時期に生じた所得の落ち込みからの回復(反動)という側面が含まれていると考えられ、手放しでの楽観視は避けるべきである。しかし、反動分を差し引いたとしても、所定内給与の伸び(+3.22%)を可処分所得の伸びが上回っている現状は、家計にとって好ましい構造であることに変わりはない。

 

 

所得税抑制の定着と社会保険料の動向

 3月度のデータにおいて、所得税QPIは前年同月比+0.27%と、極めて低い伸びに抑制されている。前月(+0.93%)に続き、1%を割り込む低水準が維持されており、昨年末の+8.63%という高い伸びと比較して、家計負担の軽減効果が極めて鮮明となっている。これは令和8年分給与所得の源泉徴収税額表による実質的な減税効果が、3月においても強力に機能しているためと考えられる。

 

 

 一方、地方税QPIは前年同月比+2.26%(前月+2.13%)、社会保険料QPIは+2.46%(前月+2.34%)と、いずれも微増ながら所定内給与の伸び(+3.22%)を下回る水準で推移している。賃上げによって名目年収が増加すれば、本来であれば税・社会保険料の負担も累進的に増加するはずであるが、現在の税制支援策がこの「手取りの壁」を緩和し、賃上げ分を家計へ効率的に還元する役割を果たしていると言える。

 

 

実質的な手取りと外部環境のリスク

 物価動向との比較においても、家計の状況は改善傾向にある。2026年2月の消費者物価指数(CPI・総合)は前年同月比+1.3%(持ち家の帰属家賃を除く総合は+1.4%)となり、2022年3月以来の低水準を記録した。3月のCPI予測値も+1.5%程度とされており、物価上昇の勢いは安定しつつある。

 3月度の可処分所得QPI(+3.43%)がこの物価上昇率を2ポイント近く上回っている事実は、家計の「実質的な手取り」がプラス圏で推移していることを裏付けている。これは毎月勤労統計調査において実質賃金が2か月連続でプラス(2月速報値+1.9%)となった動きと一致するものである。

 ただし、前月レポートでも言及した地政学リスクには引き続き注視が必要である。原油価格の動向や、4月以降の電気・ガス代補助金の縮小・終了予定は、今後のCPIを押し上げる要因となり得る。物価の再上昇が手取りの伸びを上回れば、現在確保されている実質的な所得増が再び縮小するリスクも孕んでいる。

 

給与の上昇が物価の上昇を超える環境の持続が重要

 2026年3月度のQPI結果は、賃上げの定着と税制支援による「実質的な手取り増」が、昨年度の低迷期を脱して確固たるものになりつつあることを示した。昨年度のベース効果が含まれているとはいえ、所得税負担の抑制が手取り額を押し上げる構造は維持されており、家計の購買力は確実に底上げされている。

 今後は、歴史的な高い伸びが期待される4月の春闘回答の反映、および5月以降の地方税の改定、社会保険料の動向を注視する必要がある。外部要因によるインフレ再燃の懸念は残るものの、現在の「給与増>物価増」の構図をいかに持続させるかが、2026年度の日本経済における最大の焦点となるだろう。

 

参照

総務省統計局. 消費者物価指数(2026年2月分). https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html(2026年4月10日参照)

厚生労働省. 毎月勤労統計調査 令和8年2月分結果速報. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2602p/2602p.html(2026年4月10日参照)