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人事変革未来フォーラムVol.5 令和時代の人材戦略と働きがい

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人事変革未来フォーラムVol.5 令和時代の人材戦略と働きがい
働き方改革第2章!
令和時代の人材戦略と働きがい
~成長力・競争力の源泉は人材のエンゲージメント~



学習院大学 経済学部経営学科 教授 守島基博氏

HR エグゼクティブコンソーシアム代表 楠田祐氏2019年7月5日、株式会社ペイロールが主催する「組織・人事変革未来フォーラム Vol.5」がベルサール六本木グランドコンファレンスセンターで開催されました。
第5回となる今回は、働き方改革を"第2章”へ進めていくための鍵となる「令和時代の人材戦略と働きがい」をテーマとし、学習院大学 経済学部経営学科の守島基博教授による基調講演が行われました。
その後、株式会社ペイロール取締役の香川憲昭が企業の人事改革の最新動向に関する講演を実施。最後に、千大輔氏(サントリーホールディングス)、柴田剛氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)の2氏にご登壇いただき、HRエグゼクティブコンソーシアム 楠田祐氏のファシリテーションでパネルディスカッションを行いました。




令和元年、働き方改革第2章

起こりつつある深刻な人材不足

現在、多くの企業が推進している働き方改革。それを次のステージに進めていくために求められることは何でしょうか。
守島氏は「働き方改革は、法対応などコンプライアンスのために行うものではありません。現在、日本は未曾有の人材不足の時代に入っています。働き方改革は人材不足の時代において、きわめて重要な人材戦略の一部だと考えています」と述べ、深刻さを増す人材不足の状況と背景について論じました。



○データが示している人材不足の状況
・帝国データバンクの調査(2018年10月)で、対象企業約10,000社の52.5%が正社員が不足していると回答。
・マンパワーグループの調査(2018年)によれば、各国で人材確保に困難を感じている企業の割合は、グローバル平均が45%であるのに対し、日本は89%。

守島氏:
「『人材不足』と『人手不足』が指す意味は同じではありません。人手不足は単に人が足りないことですが、人材不足とは、たとえば重要な事業を任せられる人など、ビジネスをうまく回していくために必要な人材が足りないことだと私は定義しています。つまり、企業が自社にとって何らかの戦略が必要だと考えたとき、それを担える人材が十分にいないというのが人材不足です。今、そのような状況に陥っている日本企業が増えているようです。」

○人材不足を引き起こしている要因は何か
・背景には長期的な労働人口の減少もあるが、より大きな要因は、多くの企業での経営環境と戦略の変化。
・経営環境と戦略の大きな変化は、従来とは異なった人材を要請する。

守島氏:
「日本企業の成長戦略、事業戦略は大きく変わってきました。例えば、数年前からグローバル化やM&Aを中心とした成長戦略を描く企業が非常に増えましたし、最近ではイノベーションやICT・AIのさらなる活用を競争戦略の中心に置く企業が多いように思います。
戦略が大きく変わると、今までとは全く違う人材が必要になります。その人材が社内にいなければ、外から採用するか、中で育てなければなりません。戦略が変われば、従業員は多くても人材不足だ、という状況は起こり得るわけです。」

働く人にも大きな変化が起きている

○価値観の変化
・ワークライフバランスを重視するといわれるミレニアル世代(1980年代初期以降生まれ)が2025年に日本でも労働人口のマジョリティになると予測されている。

○進むダイバーシティ
・性別や人種など目に見える表層的な多様性ではなく、目に見えない価値観・意識の多様性、すなわち「深層のダイバーシティ」が重要視されるようになっている。

○雇用の回避
・特に優秀層において、"雇用"という形の労働力の提供を好まない人が増えそうな兆候がある。

守島氏:
「トップクラスの学生を対象としたある調査で、卒業後に希望する進路として最も多かったのがベンチャー企業への就職、起業でした。ある大手IT企業でも、内定を辞退した学生が別の大手企業を選ぶのではなく、ベンチャー企業や起業、フリーランスを選んでいるケースが増えていると聞いています。」

○人材の質的毀損
・現在、多くの人が仕事そのものにやりがいや成長感を見出せなくなっており、モチベーションが低下している。
・結果として、確保した人材をフルに活用できておらず、多くの企業でいわば人材の「持ち腐れ」が起きている。
・各種調査の結果を見ても、日本の従業員のエンゲージメントは世界各国の中で最下位クラス。米ギャラップの調査では、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかない。

守島氏:
「働く人の考え方は昔とは様変わりしています。たとえば優秀な従業員たちが、9時から17時まで働いたら残業せずに帰りたい、家族や健康を大切にしたいと考えるのであれば、彼らを引き留めて納得感を持って働いてもらうために、人材マネジメントを変えなければなりません。従業員が貢献意欲も成長感も喪失し、能力をフルに発揮していない状況は、人材マネジメントにおいてきわめて大きな問題です。」




この局面での重要な人材戦略が、働き方改革

○「人材不足」の問題点
・労働人口の減少と戦略の転換により人材のミスマッチが起こっていることに加え、働く人の人生、ワーク、キャリアに対する意識や価値観が変化し、望ましい働き方が変わっている。
・働きがいを見失い、仕事にエンゲージできない人材が増えている可能性がある。
・量的・質的な人材不足のダブルパンチは、企業が戦略を達成できず競争力が低下する事態を招きかねない。

○働き方改革の現状はどうなっているか
・よく話題になっているのは、長時間労働への対応、働く場所と時間の柔軟化、仕事の見直しによる生産性の向上、同一労働同一賃金の導入。
・残業時間の罰則付き上限規制をはじめ、法律の施行も順次行われている。
・現在の働き方改革は、労働時間削減や働きやすさだけが強調されがちで、働きがい、エンゲージメント向上、成長などの視点が弱い。

○働き方改革は、戦略人事の観点からきわめて重要
・働き方改革とは、
(1)多様な個が可能な限り自らの適性とニーズに合った働き方ができることを可能にし(働きやすさ)、
(2)高い意欲を持って成長しながら働ける環境をつくり(働きがい)、
(3)それによって人材を確保し、量的・質的人材不足に対応する人事戦略

守島氏:
「働きやすさを重視することも大切ですが、それだけではなく、働く人たちがいきいき、わくわくしながら、高いレベルのエンゲージメントで仕事ができる状態をつくっていかなければなりません。これは人材不足の状況下で非常に重要なポイントです。働き方改革は、現在の段階で止まってはいけないと私は考えています。」




働き方改革の第2章では、何が必要になるのか

○多様な個への対応
・働く場所と時間の柔軟化、ワークライフバランス施策など、一人ひとりのニーズや制約を受け止め、それを尊重し、可能な限り対応することが必要。

守島氏:
「例えば、上司に申請すれば、理由を問わず、全社員が会社以外の場所で、自由に勤務時間を決めて働ける制度を導入している日本企業もあります。集団への対応ではなく、一人ひとりのニーズや制約にどこまで対応できるかということが大事なポイントになってくると思います。」

・上司や同僚と異なる意見を臆さずに言える、心理的安全性の高いインクルーシブな文化のある職場づくりも大切。このような組織は、イノベーションの創出にもつながる。

守島氏:
「ダイバーシティは職場に多様な人材がいることであり、インクルージョンは、その多様な人材の経験や能力が活かされ、ビジネスの成果にも結び付いていくということです。誰もが自分の考えを述べ、活発に議論ができる職場をつくれば、そこから優れた意見やアイデアを引き出し、イノベーションを生み出せるかもしれません。そうした職場づくりも、重要な働き方改革の一部だと思います。」

○人事管理の変革
・配置における自己選択・自己決定をできるだけ尊重する。自ら選んだ仕事であれば、エンゲージメントも高くなる。

守島氏:
「戦略に基づいて必要な職務を明確化した上で就きたい仕事を選ばせ、目標へのコミットと成果責任を負わせるということです。希望する仕事を自己申告しても受け入れられない組織では、いきいき働いてほしいと言っても難しく、自律性もなくなってきてしまいます。」

・評価の改革を行い、一人ひとりの貢献や成長を評価し、組織として認める仕組みをつくる。

守島氏:
「最近では、一人ひとりの個性や能力、制約も含め、いろいろな条件を総合して、現場で丁寧に評価しようというノーレイティングが評価改革のフロントラインに乗ってきています。個にできるだけ近づいた評価に変えることは重要だと思います。」




○仕事の見直し
・働き方改革の鍵は、仕事のやり方改革。特に重要度が高いのは、暗黙知化された仕事方法の見直し。

守島氏:
「仕事というのは、時とともにルーティン化します。現在の環境下で本当にこの仕事が必要なのか、このやり方でよいのかを問い直し、無駄を削ぎ落す必要があります。これをやらない限り、どれほど働き方改革をしても、働く人たちは効率的に仕事ができません。」

○マネジメント(リーダーシップ)の変革
・過去の働き方に適合したマネジメントではなく、個の自律を前提としたリーダーシップへ。

守島氏:
「上からトップダウンで何かをさせるのではなく、下の人たちの言葉に耳を傾け、サポートしていくマネジメントスタイルに変えることが必要です。
マネージャーは自分のかつての上司のマネジメントスタイルを踏襲しがちですが、そこを変えないと、働き方改革の第2章へと進んでいくことは難しいと思います。
最後になりますが、これまでお話ししてきたことを成功させていくためには、働く人たちが自律していることが大前提です。自律とは、自分で仕事と人生をコントロールすることです。まず働く人たちが自律していなければ、自らの目標を持ち、高いエンゲージメントでいきいきと仕事をするように変えていくことは困難です。
多くの企業の方々には、働く人々の自律を本気で認め、変革の推進に取り組んでいただきたいと思っています。」


守島氏の講演は、高い視点から働き方改革を人材戦略として捉え、人材のエンゲージメントを高めることを成長力、競争力強化につなげていくための道筋を示すものでした。

続いて行われた株式会社ペイロール取締役の香川憲昭による講演では、経営者、人事責任者を対象に同社が実施した人事改革アンケートの結果を報告。
約8割の企業が人事改革(働き方改革)にすでに着手している一方で、その達成度については50%以下との回答が約5割強を占めるなど、改革の果実を手にすることが必ずしも簡単ではない状況が明らかにされました。コア業務に集中できるよう、人事改革の第一歩として給与計算業務のノウハウを提供する同社では、サービスの「クラウド化」を推進。オンラインで標準化された環境でのサービス展開を始めています。



プログラムを締めくくるパネルディスカッションでは、サントリーホールディングス、ソニー・ インタラクティブエンタテインメントの2社における改革の貴重な取り組み事例の紹介を受け、守島氏は「いずれの事例も従業員の自主性、自分から生み出していく力を重視されており、働き方改革の次のあり方を見せていただいたと思います」とコメント。

最後は香川が「人材に多く投資する企業は株価収益率が高いというデータもあり、将来は投資家が企業の人材戦略をKPIとしてウォッチするだろうとの予測もあります。日本でも、経営者が自社のエンゲージメント指標をIRで伝えるという未来がすぐそこに来ているのではないかと感じます」と述べ、フォーラムは盛況のうちに幕を閉じました。








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